ベイジン

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 真山仁の「ベイジン」上・下(幻灯舎文庫)を読了。<あらすじ>長年原子力発電所の建設に携わってきた田嶋伸悟は中国に新設される世界最大級の紅陽核電の技術顧問となって赴任する。折しも北京五輪を控えた中国首脳は開会式に紅陽核電の運転開始日を合わせ、原子の火がもたらす電力を北京に送電することを目論む。大連市党副書記で紅陽核電の中国側運開責任者である鄧学耕とはじめ対立するも、やがて友情に結ばれた二人は数多の困難を克服し晴れの日を迎える。しかし・・・。
 小説では原発先進国日本からやって来た技師たちが、技術レベルも安全意識も低く管理も行き届かない中国人スタッフを叱咤し訓練する様子が描かれる。その安全意識の欠如がやがて事故を招来するのだが・・・。この作品は2008年7月東洋経済新報社より刊行、2010年4月に文庫本の初版発行となっている。作者は文庫版あとがきで中国に自国ブランドの原発を輸出する計画があるのを危惧しているが、当の日本で最悪の原発事故を起こしてしまったのは皮肉というほかない。長年原子力政策を推進しながら、安全神話にすがって危機意識が低かったのは東京電力など日本の電力会社の側だったのだ。

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2019年10月

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