いつも下りで使っている丹沢の大倉尾根。ダラダラ延々と上りが続くことから通称「バカ尾根」とも呼ばれている。日本アルプスや海外遠征する人もトレーニングで登っているという。ここを一度登ってみたいと思いつつ、真東だから夏場はとても行く気が起こらなかった。朝からジリジリと直射日光を受けるのは、考えただけでぞっとする。師走の声を聞いて、いよいよ好機巡り来るの思い。ルートは塔ノ岳に直登、新大日に下ってそこから戸沢経由で大倉に戻るというもの。大倉から山頂までは標高差1200メートル。この日は列島が大寒波に覆われていて凄く寒い。日本海側は大雪だが、関東地方は晴れ予想だから勢いこんで出かけた。登山道を少し上った「見晴小屋」まで来ると、なんと餅搗きをやっている。登山者に振る舞ってくれるというので遠慮なく頂いた。全型の4分の1に切られた海苔にずんだ餅を包んだのが美味しい。
大気は澄んでいるがとても冷たくて、喉をやられそうだ。手袋で口を覆って登り続ける。ネックウォーマーが必要だ。尾根筋に出ると風も強いので耳当てか帽子も欠かせない。山は厳冬期だけにいたるところ霜柱が立っている。標高の高い斜面の日陰には雪が残っていた。富士山は上部が雲に隠れ、山頂に近づくと雪が舞ってきた。空はしだいに鉛色と化し、不安をあおる。大倉から3時間で尊仏山荘着。吹きさらしの山頂では大勢の人が休憩中。ラーメンなど作る人もいるがとにかく寒い。山荘で休憩してもいいが、まったりすると後が辛そうだ。ライトダウンのベストを着込んですぐに下山。大倉尾根をピストンで下った方が無難に思えてちょっと悩むも、新大日小屋前で昼食休憩することにする。表尾根からは人気のルートだけにグループが続々上ってくる。行者ヶ岳に向かう途中の政次郎の頭から尾根を下って戸沢に向かう計画だが、分岐点で漠然とした不安がもたげて来た。単独行だし人気の少ないルートは避けた方がいいか(後で聞くと、途中で崩落した箇所があったらしい)。
結局予定変更、表尾根をヤビツに向かって逆行することになった。烏尾山、三ノ塔、二ノ塔と上り下りするわけだから結構ヘロヘロになる。表尾根の登山道は荒れていた。さらにうっすらと積もった雪が日光で溶け、尾根筋は泥道になってしまっている。三ノ塔から眺める丹沢の眺望は素晴らしい。山稜ばかりか南に遠く相模湾をも望む。富士山もかなり雲が切れてきた。あとは一気に下って富士見山荘前。山荘の影も形もないのに驚く。あとで調べると、7月に火事で全焼したらしい。これは残念なことで復活を祈りたい。舗装道路をヤビツ峠に向かって上る。14時54分峠着。バスの時間を見るとなんと3分前に出た後だった。次は1時間後だから待つべきかどうかで葛藤。蓑毛に下れば50分かかるらしい。待つ方に心傾いたが、じっとしていても寒いので決断、柏木林道を下ることにした。紅葉はだいぶ色褪せているが景色のいいルートだ。日光が遮られるとかなり暗くなってきた。最後は走るようにして15時50分蓑毛着。ルートの全長は19.1キロ、累積標高差(上り)1600メートル強といったところ。1年の締め括りにふさわしい登山だった。
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