会津若松を出ると、いよいよ只見線に入る。列車は稲刈りの終わった会津盆地を進む。会津坂下あたりまで来ると、只見線のローカルな世界に入り込んでいた。この駅でタブレット交換を撮ろうと急いでドアを出るが、タッチの差で撮り逃す。交換は一瞬で済んでしまっていた。列車が完全停止してからドアを手で開かねばならないが、そのドアが結構重くてタイムロスがあるのだ。次のチャンスは会津宮下。先頭車両は鉄な人たちの他に団体で乗り込んだおじさん、おばさんグループが宴会状態を繰り広げており、ちょっと異様な雰囲気。ドアの前にシートを敷いて酒盛りになっているので、会津宮下が近づくと早めに席を立って、ドアの前に立った。絶対逃さない意気込みだが、後ろから手が伸びてドアのレバーを握っている。同じく会津坂下でミスして目が血走った鉄ちゃんだ。無言で視線を合わせると「ドア、開けられますか」と訊くので頷くとやっと手を離してくれた(笑)。会津宮下に着いた。今度はダッシュでキハの先端部分に位置決めした。と、後ろから「構えているのに前に出んな」の声。その声に振り向くと周囲はタブレット交換狙いの撮り鉄の男達がずらり。のんびり列車から降りて来た、ほろ酔い加減のおじいちゃんが「停車時間、1分しかないよ」「もう出ちゃうよ」と大合唱を浴びせられていた。これにはこっちも焦った。ここ一番ってシーンを前に厄介払いしようってわけだ(笑)。まあ、その心境は分からないでもないが。しかし、おじいちゃんにしても乗客なわけだから。酔いを醒まそうとホームに立つのも自由な筈だ。内心反発を覚えながら「交換が済まない内に出るわけないよ」と呟く。ここではタブレット交換は儀式のように進んで無事に撮影することが出来た。
大きな目的だったタブレット交換を撮り終え、ちょっと気が抜けてしまった。会津川口、只見駅でも交換の予定があるが、まあいいかと。会津宮下〜早戸間は第1只見川橋梁を始め、有名な撮影スポットが連続している。第3橋梁のスポットだろうか、はるか彼方のスノーシェルターの上部に鈴なり状態で追っかけの姿が見えた。勿論、シェルターの柱の間にはびっしりレンズが並んでいた。この辺りから只見線の紅葉も佳境に入って来た。ピークにはちょっと早いのかも知れないが、特に山の上の方の色づきは見事だ。会津宮下でE-1のバッテリが怪しくなってきたので、E-3に換えて撮影。青空、紅葉のシーンにはCCDの発色が合うかも知れないと、今日はE-1をメインに使って来た。只見線を撮るなら橋だ。橋を渡るキハ52のシーンは惜しくも撮れないが、車内から眺めた只見川も美しい。会津川口、只見と停車駅で紅葉を背景にキハ4連を撮影。大白川では対向して来た会津若松行きのキハ40を撮った。大白川を過ぎると山間部を出て次第に平野部へと出て来る。只見線の旅も終わりに近づいた。前日、ムーンライトで来て「磐西・只見ぐるり一周号」をほぼ全線乗り通しても、長過ぎるとはちっとも思わなかった。
小出駅で名残惜しくキハ52を下車。上越線で浦佐まで行き、そのまま新幹線で帰れば17時台に東京着。けれど、このままただ帰るのは勿体ない気分(笑)。八海山の山容を左手に眺めつつ、越後湯沢で下車。ぽんしゅ館内の「酒風呂 湯の沢」で温泉入浴。ここは一度体験してみたかった。利き酒は今日はパス。地ビールと白瀧酒造の「湊屋藤助」を購入。17時55分発の水上行き普通列車に乗って「湯檜曽ループ」を体験してみようと考えたが、接続に1時間以上あるので泣く泣く諦め、上越新幹線で帰ることに。窓口で切符を清算、通しの区間変更券を作成してもらった。それには「経由:信越・磐越西・只見線・上越・浦佐・新幹線」とあった。
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