只見線は予てから一度は乗ってみたいと思っていたが、果たせずにいた。24、25日の両日、新潟発で磐越西線・只見線をぐるっと一周して新潟に戻る「磐西・只見ぐるり一周号」の存在を知り、強い興味を抱いていた。しかし二週連続して谷川岳に行っているし、それも新幹線利用と費用も掛かっているし、どうしたものかと思っていた。それとは別に、日経の別刷りで「写真家が選ぶ紅葉の美しい渓谷」の東日本のベスト5にも入っている山梨の西沢渓谷にも行ってみたいな、と思っていた。「七ツ釜五段の滝」は有名だ。しかし、直前の天気予報で雨とのことで、この方面を断念。一方、只見線の新潟・福島方面は晴れ予報が出ており、こちらに気持ちが傾く。会津宮下あたりに泊まって、有名な「第1只見川橋梁」から撮影するプランも立てたが、只見線は一日何本も本数がなく、その後の足がない。鉄道利用ではかなり苦しい。只見線は車抜きでは計画が立てられない。それで、今回は「乗り鉄」に絞ることに。列車の遠景は無理だが、紅葉を背景に国鉄色キハ車両の表情を切り取ることが出来れば。新潟からの始発に間に合うためには快速「ムーンライトえちご」の利用が便利。全席指定席なので24日も夕方になって急ぎ中野駅の「みどりの窓口」に向かった。「ムーンライト信州」ではしくじったが、これはゲット。23時10分の発時間に合わせて新宿駅5番ホームに立った。
新宿駅を発車するとネオンの洪水の都会から夜の闇、そして山間部へと向かう。この落差というか非日常感が堪らない。高崎で14分の停車時間にムーンライトを撮影していると、隣のホームに何と急行「能登」が進入して来た。そうか、上野23時33分発だからここで追い付くわけだ。歴史の匂いを漂わせる、ボンネット型急行の存在感は圧倒的。ムーンライトを撮っていた人も被写体をこちらに変えて撮りまくっている。越後湯沢では上りの「能登」と遭遇。長岡経由で新潟駅には4時51分着。さすがにちょっと寒い。「ぐるり一周号」の乗車券の買い方が判らず、現地調達するつもりだったので西口改札を出て、女性の駅員に尋ねる(東京から通しで買うと、信越本線の新潟〜新津間が重なるため発券が難しいようだった)。とりあえず会津若松まで買って後は清算すればいいかと考えたが、100キロ以内の近い駅まで買った方がお得だと教えてくれた。それで320円の乗車券を販売機で買って5番ホームに下りてみた。この選択はかなり微妙だった。それというのも、その時点で既に先頭車両の最前部には9人分の鞄やらリュックが並んでいたから。7時44分発だが、5時に並んでも10番目だった(汗)。列車は4両編成だが後ろの方も同様。先頭部にしたのは深い思惑があってのことではない。もしかすると運転席の様子や進行方向が現認出来るかと思っただけ。しかし、これが思いがけない幸運をもたらすことに。
3時間近くの時間をつぶすのはしんどい。只見線の資料を再検討したり、入線したり出て行くローカル列車を撮ったりして気を紛らすしかない。トイレまでが遠くてかなり歩く。途中、早くも開いている駅弁売り場を覗いてみた。色とりどりの駅弁がたくさん並んでいる。結局、会津若松駅で買ったのだが、新潟駅の品揃えは抜群。ここにすべきだった。
やっと「磐西・只見ぐるり一周号」が入線して来た。その構成はキハ52の二連とキハ28、キハ58というもの。キハ52は大糸線でしか乗れないと思っていたので、大感激。しかも、その大糸線での運用からも外れ、引退の方向だ。見るのも乗るのも来年3月が最後かと。先頭車両がキハ52に当って嬉しい。しかもボックス席仕様。二両目はボックスとロングシート、三両目以降はロングシート仕様だ。この時間になると後ろにも行列が出来ているので扉が開くと猛ダッシュだ。しかし、進行方向窓際は無理。通路側をゲット。窓際でも後ろ向きは嫌だし。それでも立見も多数出ている状況から、座れただけでも幸運とすべし。正面は駅鉄の人。停車駅ではダッシュで改札を出て駅の写真を撮っていた。その隣の人は、前日大糸線に乗って来た強者。只見線にも詳しく、駅の情報やら最寄りの温泉の話などいろいろ伺った。
沿線風景も五泉を過ぎた頃から磐越西線らしい雰囲気になって来た。NHK「趣味悠々」の『デジタル一眼レフで撮るローカル線の旅』も今週の「磐越西線」でラスト。広田尚敬さんの名解説を聞けなくなるのは寂しい。五十島では新潟色のキハ47がホームに。喜多方駅では719系(あかべえ)の姿も。時間があったら喜多方ラーメンも食べてみたい。次回はぜひ。喜多方を過ぎると車窓に会津磐梯山が映る。長閑な田園風景。藁ロールが点々と転がっている。10時30分、会津若松に到着。ここで強者の先達から「駅弁を買うなら全力疾走で」とアドバイス。ちょっと油断して用を足していたら、もう幾らも残っていない状況。慌ててラスト3個くらいのうちの一つをゲット。ここで買い逃すとコンビニ弁当しかないそうだ。駅弁は「会津う米う米弁当」。会津産米の味くらべが出来るという。
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