Eシリーズのゆくえ

 オリンパスはカメラ事業の国内生産を終了する。15日発表された決算書によれば、映像事業の連結売上高は1,076億38百万円(前期比16.3%減)、営業損失は230億73百万円という内容だった。高機能ミラーレス一眼のOM-Dが国内外で販売を伸ばしたほか、タフ性能をうたったTG-1やTG-2が好調だったものの、スマートフォン普及の影響によりコンパクトカメラ市場が縮小、販売台数の減少や価格の下落が加速したことによるという。

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 これを受けオリンパスは低価格コンデジの開発を打ち切り、ミラーレスにリソースを集中する。国内外五つの製造拠点は中国深圳とベトナムにある工場に集約する。国内にある製造拠点とは伊那地方にある辰野工場のことである。辰野工場といえばレンズマイスターが職人芸を発揮して高性能レンズを生産していることで有名。マイスターが中国やベトナムに異動するだろうか?品質の維持という観点から危惧を抱いている。もっともEシリーズのフラッグシップ機であるE-5ですら中国製である。コンパクト高級機のXZ-2だってインドネシア製なのだ。辰野工場では、おそらくプロユースのスーパー・ハイグレード・レンズ、いわゆる「松レンズ」を生産していたのだろうが、技術の伝承ができるのかどうか不安だ。

 デジカメ事業の人員削減は3割にも上る計画だ。1万人台の従業員が7000人にまで減るのだ。一気にではなく段階を追って、希望退職を募ったり配置転換を経てのことかとは思うが、感謝祭やオリンパスプラザ東京で接するあの人やこの人の顔が思い浮かぶ。いまどき四十代、五十代の社員が再就職するのは容易ではない。かつてDRAMなど国産半導体事業が傾いて企業が人員削減に走った結果、あぶれた人材が中国・韓国の企業にリクルートされて、日本にとって強力なライバルに変貌した歴史が再現されようとしている。ミラーレスに開発力を集中するのなら、フォーサーズの存在が重荷になるのは避けられそうにない。今年後半にはE-5後継機(E-7といわれる)の発売がスケジューリングされているとも聞くが、その予定も風雲急を告げているといえそうだ。