旧ブログに書いた中に「高原野菜とカツの弁当」にふれた記事があった。それはField&Stream誌の日本版(ソニー・マガジンズ)のある号に掲載されたコラムに関連したもので、このように書いた。
八ヶ岳合宿の帰り、小淵沢駅でカツ弁当を買って食べながら東京に帰った話が載った。レタス畑の丘から駅に下って行くと、そのレタスが弁当に化けて待っていたって話だ。
最近福岡の実家に帰る用事があって、その際に古い雑誌を整理していて件の記事をみつけた。ずっと心に引っかかっていたので発見できて嬉しい。それは同誌の93年12月号に作家の駒沢敏器氏が書いたコラムなのだった。改めて読み直すと、細かいディティールが違っていた。高校生だった著者は山登りが娯楽で、友人らとよく八ヶ岳に登った。帰りに小海線から中央線に乗り換える際の待ち時間に小淵沢駅のホームで「高原野菜とカツの弁当」を食べるのがお決まりのようになっていた。『みずみずしく、シャキッとした歯応えのある八ヶ岳高原産のレタス。そして、噛むとジューシーな味わいのあるカツ、添えられたレモンも分厚く、これも駅弁の常識を超えていた。炊きたてのご飯からは湯気が上がり、その他ふくめ煮や山菜、きんぴらなどの取り合わせは、それ以上考えられないほどの完璧な調和を見せていた。しかもこの弁当を、空気のきれいな場所で、八ヶ岳を眺めながら、登山で空っぽになっている腹の中へ流しこむのだ。しあわせでないはずがない。(同コラムより抜粋)』
駒沢敏器氏のコラムは高原レタスのようにみずみずしい。作家としては寡作だったのかなと思うが、非業の死を遂げられて、もう新作を読めないのが残念でならない。レタス畑の丘から駅に下っていく話は、他の記事と混同したのか、あるいは頭の中で勝手に創作してしまったのか。周辺にはレタスやキャベツ畑がたくさんあるので、合宿帰りに駅弁をパクつくシーンも容易に見られるに違いない。(富士山の写真は往路のANA機からの眺め)
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