セザンヌと過ごした時間

 ETVの「旅するフランス語」を見ていると、最後に映画の案内があって、ダニエル・トンプソン監督の「セザンヌと過ごした時間 Cézanne et moi」の案内があった。その時心を惹かれたのは、売れないセザンヌがゾラに言った「俺はお前のように描きたいんだ」という言葉。原語では"Je voudrais peindre comme tu écris"となる。オフィシャルサイトで調べると、まだ公開中(27日まで)だというので、新宿三丁目の「角川シネマ新宿」に出かけた。折よく水曜日はサービスデーというので1,100円だ。これは有難い。

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小ぶりな劇場で、スクリーンも小さめ。しかし映画はよかった。フランスプロヴァンス地方の圧倒的な映像美。色彩がなんといっても美しい。映画では、ポール・セザンヌと作家エミール・ゾラの少年期の出会いから晩年までを、数々のエピソードを織り込んで描く。破天荒で型破りで、ときに下品な言葉を吐き散らすセザンヌ。中央の画壇からは当然のように受け入れられない。都会の片隅のアトリエでの作品も、本人そのままに鬱屈している。すでに有名作家となったゾラがセザンヌを陰から支える。パリからエクス=アン=プロヴァンスに戻ってからは徐々に本領を発揮し始める。彼は言う「太陽のないアトリエで描いた絵なんて!」「花には香り、木には風だ!」 しかし不遇のままの彼を案じながら父は逝き、やっと才能が開花して名声を得るのは晩年になってからであった・・・。